移民局は、2019年1月31日、新規H-1Bビザ(現地採用専門職ビザ)の申請手続・抽選方法を変更する改正規則を公布しました。
トランプ大統領は、2017年4月18日付けの大統領令(Executive Order)第13788号「Buy American and Hire American」第5(b)節において、H-1Bビザが賃金水準の高い優れた能力をもつ外国人に発給されるよう現行制度を見直すことを関係省庁に求めていました。今回の改正規則はこの条文に基づいて公布されるものです。(H1-Bについては、以前から、賃金水準の低い外国人プログラマ-を採用するITアウトソーシング企業などにより利用され、これがアメリカ国民の雇用を奪い、賃金を押し下げる結果を招いているとの批判がありました。)
新規H-1Bビザについては、年度(10月1日から翌9月30日まで)あたり発給されるビザの数に上限枠があり、その数は現在65,000件に設定されています(以下、この上限枠の対象となる申請を通常申請と呼びます)。ただし、アメリカの大学で修士号以上の学位を取得した外国人のためのH-1Bビザ申請(以下、修士号申請)については、年度あたり2万件までがこの上限枠の対象外となります。
毎年4月第1営業日から、その年の10月1日から始まる翌年度用新規H-1Bビザ申請の受付が始まりますが、ここ何年もの間、通常申請、修士号申請いずれも受理件数が受付開始後5日間で上限に達してしまう状況にあるため、上限を超える件数の申請を受理した場合、移民局は抽選を行い、当選した申請のみを審査しています。
【今回の改正規則の主な内容】
(1) 電子事前登録制度の導入 ‐ 2021年度用H-1Bビザ申請から運用開始予定 -
H-1Bビザの申請者(現地雇用主)は、指定登録期間内に、インターネット経由で、申請者およびビザ取得予定の外国人に関する基本情報を事前に登録することが義務付けられます。登録期間については、毎年、登録期間初日の少なくとも30日前に移民局のウェブサイトで公表するとしています。
登録期間が終わると、移民局は事前登録された申請の中から抽選を行います。当選した申請者にはその旨通知が届き、期限(少なくとも90日後)までに申請書と証明書類一式を移民局に提出し、審査を受けます。
【注意】 システム構築までに時間がかかるため、2021年度(2020年10月1日~2021年9月30日)用H-1Bビザ申請から運用が開始される予定です。2020年度用H-1Bビザの申請手続はこれまでと同じで、2019年4月1日から申請書と証明書類の受付が始まります。
(2) 抽選方法の変更
この変更は、上記(1)の変更(電子事前登録制度の導入)と異なり、2019年4月か1日から受付の始まる2020年度用H-1Bビザ申請から実施されます。
現在の抽選方法
移民局が受付開始後5日間で65,000件を超える通常申請、2万件を超える修士号申請を受理した場合、現在、以下のような順序で抽選が行われています。
① 2万件の修士号申請を抽選で選ぶ。
② 通常申請と①の抽選にもれた修士号申請の中から、65,000件の上限枠に達するために必要な数の申請を抽選で選ぶ。
2019年4月1日以降の抽選方法
抽選を行う順序をこれまでと逆にするとしています。
(i) 電子事前登録制度がスタートするまで
① すべての申請(修士号申請も含まれます)から通常申請の上限枠65,000件に達するために必要とされる数の申請を抽選で選ぶ。
② 移民局が①の抽選にもれた申請の中に2万件の上限に達するに必要とされる数の修士号申請があると判断した場合、2万件の上限に達するために必要な数の修士号申請を抽選で選ぶ。
(ii) 電子事前登録制度がスタートした後
① 事前登録されたすべての申請(修士号申請も含まれます)から通常申請の上限枠65,000件に達するために必要とされる数の申請を抽選で選ぶ。
② 移民局が上記①の抽選にもれた申請の中に2万件の上限に達するに必要とされる数の修士号申請があると判断した場合、2万件の上限に達するために必要な数の修士号申請を抽選で選ぶ。
移民局は、過去5年間の通常申請・修士号申請それぞれの受理件数・当選件数の統計からみて、抽選を行う順序をこれまでと逆にすることで修士号申請の当選者が16%増えると見込んでいます。