同一外国人労働者のための複数申請の提出が禁止へ

2009年度分のH-1Bビザ申請(*)の受付が2008年4月1日より始まりますが、3月19日移民局は、同ビザ申請に関連して、①同一外国人労働者のための複数申請の提出を禁止する、さらに②H-1Bビザ申請の受理件数が年間上限枠に達した場合の措置などを定めた改正規則を公布すると発表しました。同改正規則は、連邦官報(Federal Register)に公布され次第、施行されます。[更新:同改正規則は、2008年3月24日公布、施行されました。]

*2009会計年度分のH-1Bビザ申請=2008年10月1日から2009年9月30日までの間のいずれかの日を就労開始日とするH-1Bビザ申請。(以下「会計年度」を「年度」と記載。)

 

H-1Bビザの場合、他の非移民ビザと異なり、1年度あたり発給されるビザの数に上限(枠)があります。2009年度の上限数は65,000件とされています。(ただし、このうち6,800件については、チリ、シンガポールと締結している自由貿易協定に基づき、チリ国籍、シンガポール国籍の外国人に発給されることになっていますので、実質58,200件となります。)

 

ただし、H-1Bの修正申請や追加申請、また高等教育機関・非営利研究団体・米国政府研究機関で働く外国人のためのH-1B申請などは上限枠の対象外とされています。さらに、アメリカで修士号、または博士号を取得した外国人のために行なうH-1B申請については、2万件までが65,000件の上限枠の対象外となります。

 

2008年度分のH-1Bビザ申請について言えば、2007年4月2日(月)から申請の受理が始まりましたが、同日中に受理件数が上限枠に達してしまい、またアメリカで修士号・博士号を取得した外国人のための申請については、4月30日に受理件数が2万件に達しています。

 

公布が予定されている改定規則の概略は以下の通りです。

 

  (1)同一外国人労働者のために行なう複数申請の禁止

 

雇用主は同一外国人労働者のために1年度内に「複数」のH-1B申請を行なうことができなくなります。

 

この場合の「複数」というのは、いずれの申請も、年間上限枠の対象となるH-1Bビザ申請か、またはアメリカで修士号、または博士号を取得した外国人のためのH-1Bビザ申請で、かつ、下記①または②のいずれかに該当する場合をいいます。

 

① 雇用主が同一外国人労働者について全く同じ内容の申請を2通以上提出すること。

 

② 雇用主が同一外国人労働者のために仕事内容の異なるポジションについてそれぞれH-1B申請を提出すること。

 

雇用主が同一外国人労働者を仕事内容の異なるポジションに配置しようという場合、移民局は、まずどちらかのポジションでH-B申請を行い、後日別のポジションについて修正申請または追加申請を行なうよう指示しています。この場合、最初に行なった申請は上限枠の対象となりますが、修正申請または追加申請については上限枠の対象外となるため、ここでいう「複数」とはなりません。

 

なお、複数の雇用主が同一外国人労働者のためにそれぞれH-1Bビザ申請を行なう場合、当該外国人労働者に対し2件以上の申請が提出されることになりますが、これは移民法で認められています。(この場合、1つの枠として計算されます。)

 

また、親会社と子会社など関連会社が同一外国人労働者のためにそれぞれH-1B申請を行なうことについては、改正規則によれば、問題なし、としています。

 

雇用主から同一外国人労働者に対するH-1Bビザ申請が「複数」提出されていることが判明した場合、移民局は申請すべてを却下するとしています。この場合、申請料も返却されません。また、「複数」の申請が提出されていることを移民局で当初把握できず、いずれかの申請を認可してしまった後で「複数」申請がなされていることが判明した場合、移民局は当該認可を取り消すとしています。

 

 

 (2)受理件数が上限枠に達した場合の措置について

 

H-1B申請の受理件数が、申請受理開始日から5営業日まで(2009年度分については、2008年4月1日から4月7日まで)の間に65,000件に達した場合、5営業日目(2008年4月7日)を「最終受理日」とし、同日までに移民局が受理した申請の中から上限数分の申請を抽選で選ぶとしています。

 

65,000件の上限枠のみならず、修士号・博士号を取得した外国人労働者のためのH-1Bビザ申請(以下「修士号・博士号申請」)の受理件数についても申請受理開始日から5営業日までに2万件の枠に達した場合には、上記6,5000件分の抽選を行なうに、5営業日目までに移民局が受理した修士号・博士号申請から2万件分の申請を抽選で選ぶとしています。この2万件分の抽選から漏れた修士号・博士号申請は65,000件分の抽選に回されます。

 

抽選に漏れた申請、また最終受理日までに受理されなかった申請については却下扱いとなり、申請料と共に申請書類が申請者に返却されます。

 

昨年の場合、申請受理開始日の2007年4月2日に65,000件の枠に達したため、移民局は2日を「最終受理日」として、翌3日までに移民局が受理した申請の中から抽選で上限分数の申請を選ぶという方法がとられましたが、今回の規則改正により、抽選対象となる申請の受理日が5営業日まで延長されたため、昨年より多めの申請が抽選対象になるという点で朗報と言えます。

 

 
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