雇用に基づく移民ビザ

以下のいずれかに該当する外国人は、米国での雇用に基づき移民ビザを取得することが出来ます。当該外国人の配偶者、子供(21才未満、未婚)も一緒に移民ビザを取得することが出来ます。

雇用に基づく移民ビザ
以下のいずれかに該当する外国人は、米国での雇用に基づき移民ビザを取得することが出来ます。当該外国人の配偶者、子供(21才未満、未婚)も一緒に移民ビザを取得することが出来ます。

雇用第1優先

科学、芸術、教育、ビジネスまたはスポーツの分野で卓越した能力を持つ外国人
大学、研究所に勤務する卓越した教授、研究者
多国籍企業の役員、管理職として米国の子会社または関連会社に派遣される外国人

雇用第2優先

科学、芸術(スポーツを含む)、ビジネスの分野で例外的な能力を持つ外国人
上級レベルの学位を持つ専門家

雇用第3優先

特殊技能者
学士号を持つ専門家
非特殊技能者

雇用第4優先

宗教家
その他の特別移民

雇用第5優先

投資家

なお本稿では雇用第1優先から第3優先に基づいた移民ビザ取得について説明します。


移民ビザ取得手続
米国での雇用関係に基づいて移民ビザを取得する場合、下記の3段階の手続を踏む必要がある場合と、連邦労働省への外国人労働者採用許可申請を必要としない場合とがあります。例えば、雇用第1優先カテゴリーの場合、第1段階の連邦労働省への外国人労働者採用許可申請を行なう必要はありません。

1.連邦労働省への外国人労働者採用許可(Labor Certification) 申請
特定外国人を採用し移民ビザのスポンサーとなる雇用主は、以下の2点を連邦労働省に立証し、当該外国人の採用許可をもらう必要があります。(なお、この申請に関する詳細は、本ホームページの「アメリカビザ移民法ガイド」-「外国人労働者採用許可申請」をお読み下さい。)

特定外国人が従事しようとしているポジションに最低限度適した米国人労働者を容易に雇用できないこと。
特定外国人を採用しても、同様なポジションにある米国人労働者の賃金、労働条件に不利な影響を及ぼさないこと。

2.移民局への移民ビザ請願
この請願は、連邦労働省より外国人労働者採用許可を受けた後、通常雇用主が請願者となって行ないます。この請願の中で雇用主は、採用予定の外国人には特定優先カテゴリーに該当する能力、学歴、職務経験等があり、移民ビザの有資格者であることを移民局に立証します

3.移民ビザ保持者としての登録申請
移民ビザ保持者としての登録申請は、外国人が米国外で移民ビザ取得を待っている場合、最寄のアメリカ大使館・領事館に行ないます。他方外国人が非移民ビザを持って米国に合法的に滞在している場合、非移民ビザから移民ビザへ切り替える在留資格調整申請を移民局に行ないます。

移民ビザ保持者としての登録申請では外国人が移民法の定める入国禁止規定の対象になっていないかが審査されます。例えば、過去の不法滞在により3年間、または10年間入国が認められないとする規定の適用対象者ではないあか、あるいは過去に退去命令処分を受けたことがあり、一定期間入国が禁止される者ではないか、または米国入国後何らかの公的福祉給付を受ける可能性がないかなどが審査されます。公的福祉給付を受ける可能性の有無については下記の「公的福祉給付の受給可能性に関する審査」をお読み下さい。


雇用関係に基づいて移民ビザを取得できる人々
A. 雇用第1優先(優先労働者)
このカテゴリーは以下の3つのサブカテゴリーに分類され、いずれの場合も連邦労働省への外国人労働者採用許可申請を行う必要はありません。従って他の優先カテゴリーに基づく場合よりも短期間で移民ビザを取得できます。年間約4万件、及び雇用第4優先・雇用第5優先カテゴリーの割り当てのうち発給されなかった分のビザがこのカテゴリーに振り分けられます。

1.科学・芸術・教育・ビジネスまたはスポーツの分野で
  「卓越した能力(extraordinary ability)を持つ外国人 

このサブカテゴリーに該当する外国人は、他のサブカテゴリーと異なり、米国企業・団体から採用内定をもらう必要はなく、外国人自身で移民ビザ請願を移民局に行うことが出来ます。(もちろん採用内定をもらい、雇用主が移民ビザ請願を行なうことは可能です。)

ある外国人が上記専門分野で「卓越した能力」を持っているとされるには、ノーベル賞、アカデミー賞など当該分野における業績の優秀性を認められた国内又は国際的な賞を受けていること、あるいは当該分野の専門誌、主要な業界誌、その他主要なメデイアに当該外国人の業績について発表されたことがあるといった書類を提出します。 

外国人は米国で「卓越した能力」を持っている分野に関連した仕事に就くことが必要です。単にそのような分野で仕事をするつもりだというだけでは不十分で、具体的に米国でどのように働く予定でいるのか詳述する必要があります。

2.大学・研究所に勤務する卓越した教授や研究者
このサブカテゴリーに属する外国人の場合、外国人自身で移民ビザ請願を行なうことは認められておらず、採用内定を出した雇用主(大学や研究所など)が行う必要があります。雇用主は以下の3点を立証することが必要です。

採用予定の外国人は、

  1. ある特定の学術分野で国際的に認められている事。
  2. 当該学術分野で教育又は研究に過去少なくとも3年以上携わっていること。
  3. 以下のいずれかの目的で米国に入国すること。
大学などの高等教育機関で終身在職権が保証されている、あるいは終身在職権が付与されることが予定されているポジションに就くこと。
当該学術分野の研究に携わる大学などの高等教育機関において現在と同様のポジションに就くこと。
民間企業の部課または研究所において当該学術分野に関する研究を行うため現在と同様なポジションに就くこと。この場合民間企業とは、少なくとも3人以上フルタイムの研究者を雇っており、加えて当該学術分野において何らかの功績を残している企業である必要があります。

 

3.多国籍企業の役員・管理職として米国の子会社あるいは関連会社に派遣される外国人
このサブカテゴリーに基づいて移民ビザを取得しようとする場合、以下の要件を具備していることが必要です。

  1. ビザ取得予定の外国人は、過去3年のうち1年間、米国外で移民ビザのスポンサーとなる米国企業の親会社、関連会社等で役員・管理職として勤務していたこと。
  2. 移民ビザのスポンサーとなる米国企業は既に設立されており、少なくとも1年間事業活動を行なっていること。
  3. 当該外国人は役員・管理職として米国に派遣されてくること。外国人の就こうとしているポジションが役員・管理職に該当するか否かは以下の基準を用いて判断されます。

(役員)

組織全体,組織内の重要な部門、業務の管理を監督する者。
組織全体,組織内の業務、部門に関し経営目標や経営方針を決定する者。
組織の意思決定に幅広い裁量権が認められていること。
上級役員、取締役会,株主からの指揮監督のみを受ける立場にある者。

(管理職)

組織全体,組織内の部門または業務を管理する者。
他の監督者、専門職、他の管理職を指揮,監督する者、または組織の重要な業務,部署を管理する者。
部下の人事権を持つ者、あるいは直接の部下はいないが,組織の上級レベルで業務を遂行する者。
自らが指揮管理する部門,業務に関する日常の活動に裁量権を持つ者。但し現場監督者(first-line supervisors)は、専門職を監督する場合を除いてここでいう管理職とは認められません。

B. 雇用第2優先
このカテゴリーの下、年間約4万件のビザに加えて、雇用第1優先カテゴリーで残こった分のビザが発給されます。

このカテゴリーに該当する場合、原則として連邦労働省から外国人労働者採用許可を取得する必要があります。但し例外的に、当該外国人に移民ビザを付与することは米国の国益上望ましいと判断された場合、米国雇用主から採用内定をもらう必要はなく、外国人労働者採用許可申請は免除され、外国人自身で移民局へ移民ビザ請願を行なうことが認められています。

1. 科学・美術 (スポーツを含む) またはビジネスの分野で
  「例外的な能力(exceptional ability)」を持つ外国人

外国人が当該分野で例外的な能力を持っていることを立証するためには、以下の6つの基準のうち少なくとも3つ満たしている必要があります。

  1. 当該分野に関連した上級レベルの学位を保持していること。
  2. 当該分野に関連した職務に少なくとも10年以上フルタイムで働いてきたこと。
  3. 当該分野に関連した職務の遂行に必要な免許を保持していること。
  4. 例外的な能力を持つものとしてふさわしい給与などの報酬を当該外国人が要求していること。
  5. 当該専門分野の関連団体に所属していること。
  6. 政府機関あるいは関連団体から当該分野に著しい貢献をしたと認められていること。

2.上級レベルの学位を持つ専門家
上級レベルの学位とは、通常修士号、博士号を指しますが、学士号だけであっても、その専門分野で最低5年間の職務経験があれば有資格者となります。どんなに長い職務経験を持っていても学士号がなければこのサブカテゴリーで移民ビザを取得することはできません。

専門職とは建築家、エンジニア、弁護士、医者、小中・高等学校の教師など、米国大学の学士号、またはそれに相当する外国大学の学士号を持っていることがその職につくための最低学歴条件になっている職業です。専門職に従事しているが, 学士号だけで5年間の職務経験がない外国人の場合、このカテゴリーではなく後述の雇用第3優先順位の「学士号を持つ専門家」に該当します。

外国大学医学卒業生であるが、米国政府認定の医学部を卒業していない外国人が医者として働くためにこのサブカテゴリーに基づいて移民ビザ取得を希望する場合、米国医師資格試験のパート1、パート2に合格するなどの要件を具備している必要があります。


C.雇用第3優先
このカテゴリーに対して年間約4万件のビザが発給されますが、第1、第2優先で残ったビザがある場合、その分はこのカテゴリーの中の特殊技能者、学士号を持つ専門家に振り分けられることになっています。非特殊技能者へのビザは年間1万件に限られています。

このカテゴリーのもと移民ビザを申請する場合、先に説明した3段階の手続すべてを例外なく踏む必要があります。

1. 学士号を持つ専門家
ある専門分野について学士号は持っているが、その分野で5年以上の職務経験がないために雇用第2優先(上級レベルの学位を持つ専門家)の有資格者とならなかった外国人はこのサブカテゴリーで移民ビザを取得できます。

外国大学医学部卒業生であるが、米国政府認定の医学部を卒業していない外国人が医者として働くためにこのサブカテゴリーに基づく移民ビザ取得を希望する場合、米国医師資格試験のパート1、パート2に合格するなどの要件を具備する必要があります。

2. 特殊技能者
特殊技能者とは最低2年間の職業訓練、職務経験を必要とするポジションに従事する者で、実際に外国人が2年間の職業訓練を終了したか、2年間の職務経験があるか、または職業訓練と職務経験を併せて2年あればこのサブカテゴリーに基づいて移民ビザを取得できます。

3. 非特殊技能者
2年未満の職業訓練、職務経験で十分なポジションに就く外国人が移民ビザを取得しようとする場合、このサブカテゴリーに該当します。移民ビザ取得までの時間は最も長くなります。


公的福祉給付の受給可能性に関する審査
前述したように移民ビザ保持者としての登録申請では、移民ビザ取得予定の外国人が米国で公的福祉給付を受ける可能性がないか否かが審査されます。可能性ありと判断された場合、移民ビザは発給されません。公的福祉給付を受ける可能性がないことを証明する方法は以下の通りです。

1. Iー864 扶養宣誓供述書の提出が義務付けられている場合
雇用に基づいて移民ビザを取得しようとする外国人のうち、以下のいずれに該当する者については、扶養宣誓供述書 I-864を用いて当該外国人が公的福祉給付を受ける可能性がないことを立証する必要があります。

移民ビザ請願の請願者になった雇用主が当該外国人の親戚である場合。親戚とは、配偶者、両親、21歳未満の未婚の子供、21歳以上の娘・息子、兄弟姉妹を指します。この場合雇用者が保証人となって扶養宣誓供述書を作成、署名します。
外国人が就労予定の会社が請願者になって移民ビザ請願が提出された場合で、当該外国人の親戚が会社の5%以上の持分を有している場合。この場合当該親戚の方が保証人となって扶養宣誓供述書を作成、署名することになります。

扶養宣誓供述書の提出義務は1996年の改正移民法により導入されました。保証人は供述書の中で自分の所得、資産が連邦貧困基準の125%以上であることを証明しなければなりません。

その他、扶養宣誓供述書についての詳細は、「アメリカビザ移民法ガイド」の「家族関係に基づく移民ビザ」を参照してください。

2. I-864の提出が義務付けられていない場合
扶養宣誓供述書 の提出が義務付けられていない場合でも、雇用に基づいて移民ビザ申請をする外国人は以下に挙げた書類等を提出し、公的福祉給付を受ける可能性がないことを証明する必要があります。

① ビザ申請者の資産証明

ビザ申請者の銀行口座残高、口座開設日、過去12ヶ月間の出入状況、平均残高などを詳述した銀行からの供述書
動産、不動産を所有している旨の証明書、およびその現評価額を示す書類(抵当権が設定されている場合その点も言及すること。)
株式、債権を所有していること、それぞれの市場価格を証明する書類
生命保険に加入していること、また解約払戻金額を証明する保険会社からの書類 など。

ビザ申請者の持つ資金が米国外にある場合、どのような方法で米国内に移すつもりでいるのか述べる必要があります。

② アメリカ雇用主からの雇用証明書

③ I-134書式等を用いた扶養宣誓供述書

 雇用に基づいて移民ビザを取得予定の外国人のために米国市民または移民ビザ保持者が保証人となって外国人を扶養する旨を宣誓した供述書(I-134書式は利用してもしなくても構いません)を提出することができます。この場合添付書類として保証人の納税申告書などを提出します。

ここで提供されている情報はアメリカ移民法についての一般的な情報であり、個々の事例の法的アドバイスとして利用されるものではありません。この情報だけで御自身のケースを判断なさらないで下さい。

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